Core i7-5820KでLTspice

Intel Core i7-5820Kが中古で出ていたので購入しました。5820Kは品番は5000番台ですが、中身はIntelの第4世代Core CPU(4000番台:Haswell)を拡張したハイエンドPC向けCPUで、3.3GHz/6コア/12スレッドとなっています。CPUソケットはLGA2011-v3でサーバー用CPUのXeonと同じ。

LTspiceベンチマークしてみました。Core i3-3220が3.3GHz/2コア/4スレッドですから、これが3個入っていると考えるとLTSPICEもi3-3220より3倍速い事を期待したくなります(それも目的で買った)。

  1. 回路サンプルとして添付されている LTspiceIV\examples\Educational\NE555.asc を開く
  2. シミュレーション時間を .tran 1000m として30msから1秒に変更する
  3. シミュレーションを実行し、Ctrl-Lを押してTotal elapsed timeを見る


Core i7-5820KはLTspice Version 4.23k(Mar.2016)
Athlon,A10,PhenomIIはLTspice Version 4.21z(Oct.2014)
※E-350/i3-3220はLTspice version 4.20m(Mar.2014)

・・・全然速くないですね(笑)。i3-3220のせめて2倍を期待したのですが、1.4倍止まり。

なぜ遅いか調べたところ、LTSPICE実行中のCPU使用率が30%位までしか上がっていませんでした。そこでLTSPICE Control PanelのSPICEタブでMax threadsを1〜12まで変化させてシミュレーションの実行速度を比較してみました。

5820Kは6コア+HT(ハイパースレッディング)で12スレッドも使えるのに、下図のとおり3スレッドで速度が頭打ちになっており、「3つで十分ですよ」状態。

次の図は1〜5スレッドで実行中のCPU負荷率ですが、最初の山が1スレッド、次が2スレッドで3〜5スレッドはほぼ同じ負荷率で止まっています。

これは回路規模が小さく処理が軽すぎるのかもしれません。そこでNE555.ascの元の回路からLabelを消去した後に同じ回路を図面上に3つコピーして(合計同じ回路が4つ)負荷を4倍にしてみました。同じようにスレッド数を変化させると処理速度とCPU負荷率は下図のようになりました。処理速度は上と合わせるため4倍換算しています。シミュレーション速度はやはり5〜6スレッド程度で頭打ちになっており、その上10スレッド以上はかえって速度が落ち気味のように見えます。


CPU負荷率の図は4〜9スレッドで実行時のものです。こちらはCPU負荷率は順調に上がっており12スレッド時は98%まで上がるのですが、6スレッド以上は速度は上がらないのに消費電力だけは増えていく、まさに無駄飯食らい状態(笑)。消費電力測定時はHDDを外してSSDだけ接続しています。


考察:
5820Kは6コア+HTで12スレッドまで可能ですが、Intel公式発表ではHTによる性能向上は15〜30%との事でした。よって6スレッドまでは使用コア数が増えるのでスレッド数の整数倍にCPU性能は向上しますが、7スレッド以降はHTによる(仮想?)マルチコアのためスレッドあたり最大でも0.3コア程度の性能向上となります。
これがスレッド追加のオーバーヘッドによる性能低下を上回れば処理速度は上がりますし、下回ればスレッドを増やしても処理速度はかえって下がります。実際、1スレッドから2スレッドに変更しても1.5倍程度しか処理速度が上がっていない事からも、かなりオーバーヘッドが大きい事が分かります。とは言っても無料ソフトでこれ以上望むのも酷かと思います。

結論:

  • LTSPICEは多コア/多スレッドCPUでもあまり速度が向上せず、HTの効果も薄いので、HT対応CPUの場合は実コア数=最大スレッド数(Max threads)に設定した方が地球温暖化防止の面からも幸せになれるかもしれない
  • LTSPICEでは2.2GHz/22コア/44スレッドのXeon E5-2699v4(メーカー希望小売価格 $4115)より、3.5GHz/4コア/4スレッドのCore i5-6600K(メーカー希望小売価格 $243)の方が速いかもしれない

今回の機器構成は以下の通りです。

  • Intel Core i7-5820K (3.3GHz/6Cores/12Threads)
  • AsRock X99 Extreme 4 (LGA2011-v3, ATX)
  • Crucial DDR4-2133 8GB (Single rank) x4 (Quad Channel)
  • GeForce GTX 750ti 2GB
  • Intel SSD730 240GB
  • WDC WD60EFRX x 多数 → Windows記憶域プール
  • Seasonic SS-560KM (560W 80Plus Gold)
  • Windows10 Professional

Full HD動画のH264エンコード速度を測定するx264 FHD Benchmark1.01の結果は32fpsで、PC WatchのレビューではCore i7-4790K(4.0GHz/4コア/8スレッド)が28fps、Core i7-6700K(4.0GHz/4コア/8スレッド)が30fpsでしたからそれらより少し速いようです。
Core i7-5820Kは公称TDP140Wですが、クロックが低いのでCore i7-4790S(3.2GHz/4コア/8スレッド:TDP65Wの低消費電力版)のCPUコアが1.5個分で内蔵GPUが無しと考えると実質TDP100W以下かな?SSDのみ接続してHDDを外した状態での消費電力実測値はWindowsアイドル:48W、x264 FHD Benchmark1.01実行中:143Wでした。アイドル時とエンコード時の差分は95W。PC WatchCore i7-4790KレビューではWindowsアイドル:60W、x264 FHD Benchmark1.01実行中:161W、差分は101Wですので、消費電力あたりのエンコード速度では4790Kを上回っているようです。

LTSPICEではいまいちでしたが、動画編集用には良い環境になりました。今まで使っていたPhenomII X6 1065Tを買ったのが5年前なので、これであと5年は戦える?でも3〜4年後位にi7-6950Xが中古で安く出回ったら、更なる延命のために載せ替えを検討しよう。